北麓草水

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みんなの習慣

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若菜晃子さん

vol.67 若菜晃子さん

編集者

北麓草水の店舗でお配りしている、野草だよりの文章の執筆をしてくださっている若菜さん。野草だよりに毎号寄せていただくエッセイは、私たちもとても楽しみにしています。編集者として登山専門の出版社勤務をきっかけに、山や自然の素晴らしさに魅了されたそうです。現在はフリーの編集者として、山・自然・旅・人にまつわることを取材され、親しみやすい山登りの本など、若菜さんの視点で綴られた著作を通して、山や自然のある人生のよさを伝えていらっしゃいます。また「街と山のあいだ」をテーマにしている、リトルプレス『murren』 を編集、出版されています。新緑が心地よい公園で、日々のこと、自然との繋がりについてお話を伺いました。

日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

若菜さん
いつも身近な自然を見るようにしています。
北麓草水
それは具体的にはどのようなことなのでしょうか。
若菜さん
例えば、街路樹に新芽がでてきた、花が咲いた、というようなささいなことです。春や夏だけでなく、木々の葉が落ちて、草木の緑がない季節でも自然を感じることは、たくさんあります。厳しい冬の半ばには「あっ、今日春が来た」と感じる日が必ず毎年あって、その日のことは、毎年ノートに書き留めておくようにしています。季節の変化や自然の移ろいは、ふっとした瞬間の匂い、空気の湿度や風の感触、光の強さなど、本当に小さなことから感じます。
北麓草水
とても繊細なことを感じて、それを言葉にされているのですね。
若菜さん
感じようとして自分自身をひらいていないと、見逃してしまいますし、感じても書き留めておかなければ、通りすぎていって忘れてしまいます。
北麓草水
毎日過ぎていく時間の中で、大きな出来事ではなくても、はっとする発見や、心が温かくなるような小さな出来事がありますね。その瞬間に心が動いても、日常のことに流されて忘れてしまうことが多いように思います。
若菜さん
そうですね。そうした出来事に対して、そのものの美しさや、自分の中からでてくる感情などを忘れてしまうのは、もったいない気がするのです。夕焼けや、雲が流れていく空、風にそよぐ木々など、毎日そこにある美しいもの、それは日々の生活や仕事の流れとは違う時間の流れの中にある。それを意識するかしないかでは、毎日がそして人生が違ってくると思っています。
北麓草水
若菜さんは毎日の暮らしの中で感じたことや、身近な自然の変化や発見したことなどを、フィールドノートとして小さな紺色のノートブックに書き留めていらっしゃいます。山にいく時はスケッチブックを持って「山ノート」として、地方や海外に旅するときにはそれぞれ、「海外ノート」「地方ノート」を持って、記録をされているそうです。ノートの中を見せていただくと、自然の様子や道中での出来事や出会った人、食べたものなど、飾らない言葉と絵で書き込まれ、その時の楽しさが伝わってきます。
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その他に大切にしていること、習慣にしていることは何かありますか?

若菜さん
できるだけ時間を作って、山にいくようにしています。
北麓草水
山にいくというのは、本格的な登山をされるのですか。どのくらいの頻度で山にいかれるのですか?
若菜さん
できれば毎週、どこかしらの山にいこうと思っています。数日かけて登るような高山も好きですが、最近は週末に気軽に日帰りできる低山によくいっています。
北麓草水
習慣のように山にいかれるのですね。山にいくことで、何かよいことはありますか?
若菜さん
山にいく理由は、たくさんあるのですが、ひとつには体をいつでも使えるようにしておくためです。
北麓草水
若菜さんは取材や旅行で、いつでも元気に動いていらっしゃる印象があります。
若菜さん
ありがとうございます。いきたいところへいつでもいけるように、体力を維持して、体が思うように動くようにしておきたいと思っています。編集者の仕事は、机に向かっている時間も長いので、その日の天気や自然の様子を観察しながら、毎朝ジョンギングをしています。それでも週末に山にいくと、日々の生活の中で使うのとは違った筋肉の使い方をするのか、体が目覚めるような感じがします。体だけではなく、精神も生き生きとして、山にいくと本来の自分自身に立ち戻って考えたり、感じたりできるようになります。健康と体力維持もありますが、やはりその場所に自分の身をおきたいという気持ちが大きいと思います。
北麓草水
その場所というのは、若菜さんがご著書の中で紹介されている、郊外の緑地や里山も含まれるのでしょうか。
若菜さん
はい、そうです。登山というと計画と準備が必要ですが、まずは自分の生活の隣にある自然の中に身をおいてみることなら、すぐにできます。緑の多い公園から、都心からでも一時間以内でいくことのできる里山や緑地など、自然への入口は生活のすぐ隣にいつでもあるのです。現代の生活は、感覚的に山や自然と切り離されてしまっているので、すぐ隣に豊かな自然があることに、気がつかないで過ごしてしまうことが多いと思います。私もはじめは仕事を通して山を体験し、自然の中にしかない豊かさを知りました。そのすばらしさを本を通して伝えることで、一人でも多くの人が、自然の中に出かけてみようと思うきっかけを作ることができたら嬉しいと思っています。人も大きな自然の一部であり、誰もが自分の中に内なる自然を持っている。自然を感じること、その中に身をおくことで、自然の大きさを知り、安らぎを感じ、生命力が充たされると思います。
北麓草水
お話を伺っていたら、すぐにでも自然豊かなところにいきたくなりました。これからも若菜さんが案内してくださる世界を楽しみにしたいと思います。
若菜さん
これまで山や旅の取材で、日本のいろいろな土地にいって、たくさんの素敵な人にも出会いました。その土地でずっと続いてきた風習、言葉、食べもの、生活の知恵などを見聞きするたびに、その奥深さにいつも感動を覚えます。けれども残念なことに、時代の流れとともに失われつつあるものも多くあります。よいことはどこかで残ってほしい。そこに生きる人の考えや生き方も含めて、風土に根ざした生活から生まれる堅実な行動や思慮深い言葉など、自分が知っているだけでは惜しいので、それらをまとめていつか形にできたらよいなと考えています。

植物や野鳥についても詳しい若菜さんとのお話は、枯れかけて打ち捨てられていたミモザの苗木が、若菜さんの家の小さな庭で大きく育ち、毎年道を歩く人たちを楽しませ、小鳥たちの寄り合い場になっているお話や、公園に子どもの頃から親しんでいたニセアカシアの花が咲いていたことなど、楽しい脱線をしながら進みました。そのお話から、若菜さんが自然から享受した、たくさんのよいものを、自然を愛する若菜さんの言葉で周りに伝えることで、自然にも恩返しをしているのだと感じました。次の休日には、自転車に乗って緑の多い公園にいこうと思います。ありがとうございました。

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