• みんなの習慣

    vol.134

    一般社団法人 東京都バトン協会 理事

    田中沙理さん

    今回ご登場いただく田中沙理さんは、バトントワーリングの元全日本チャンピオンで、現在は東京都バトン協会の理事を務められています。また、中学校のバトントワーリング部のコーチでもあり、セカンドワークとして一般企業でも勤務されています。それだけの仕事をしながら、日常の楽しみも忘れない田中さんに、大切にされている習慣、パワフルでいられる秘訣を伺いました。

    日々暮らすなかで習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 田中さん

      まずは食事です。友人との会食以外は、ほぼ3食自分でつくっています。「マメだね」とよく言われるのですが、例えば、お昼のお弁当は休日につくっておいて容器ごと冷凍しておくので、毎朝解凍すればよいだけ。手間と感じたことはありません。

      北麓草水

      アスリートでいらっしゃるから、食を大切にされているのですね。
    • 田中さん

      実はそんなに大げさに考えたことはないのです。食べることが好き。美味しい物って自分の舌に合う物だと思っているので、自分でつくれば美味しい物が食べられる。シンプルに考えたら、いまの食生活に行き着きました。

      北麓草水

      選手時代からの習慣でしょうか。
    • 田中さん

      決してそうではなくて。現役の頃は、栄養バランスや生活習慣を整えることは頭にありませんでした。力いっぱい練習をして、選手仲間と外食で好きな物を好きなだけ食べ、その後は遊びにも行く。振り返ると睡眠時間も少なく、かなり不規則な生活をしていました。子どもの頃から厳しい練習を続けてきたから基礎体力があり、それで身体を保てていたのだと思います。すべてが青春のよい思い出です。ただ、肌には明らかに悪影響が出ていました。敏感でニキビもできやすくて。そのうえ大会のときにはメイクをしなければなりません。一番ひどいときは角質がうろこ状にむけていました。

      北麓草水

      食事を含めた生活全般を見直されたきっかけはどのようなことでしたか。
    • 田中さん

      選手を引退したことです。練習をしなくなるので、同じ食生活をしていたら太る、でも絶対に太りたくないと思い、まずは食事を改善しました。選手でいた頃のご縁があり、専門家に食生活を見ていただいたのです。詳しい説明を受けて納得できたので、助言に従い摂る物、摂らない物を決めて実践したところ、肌の状態もよくなってきました。今では習慣になっています。

      主食は白米と玄米、押し麦を混ぜたものです。家では揚げ物はしません。また、同じ物を立て続けに食べないようにしています。一番大切にしているのは、冷たい物ではなく温かい物を食べることです。だから、家では真夏でも鍋をします。身体が温まるだけでなく、肉魚、根菜、葉物野菜とさまざまな食材を摂ることができます。根菜と発酵食品である味噌を組み合わせた豚汁なんて、最高だと思います。たっぷりつくって、朝に晩に食べることもしょっちゅうです。

      砂糖類に頼らず旨味を出すために、調味料も工夫しています。うちのキッチンには、棚5段分の調味料があるんですよ。ときどき冒険心で見知らぬ調味料を買って、「うーん、残念」ということもなくはありません。でも、たいていの調味料は、火を通すと美味しくなりますよ。どうぞお試しになってください。

      北麓草水

      日々料理をされているからこその工夫ですね。ところで、1日の食事はどのようにされていますか。
    • 田中さん

      朝ごはんは必ず食べます。食べたほうが、身体がすっきりすることを実感しましたし、何より食べないとお腹が空いて集中力を欠いてしまいますから。7時に朝ごはんを食べて、お昼は13時半、しっかりお腹が空いてから、手づくりのお弁当を食べます。

      仕事の都合で晩ごはんは時間が多少不規則ですが、友人と外食をするとしても、自然と自分の体質に合った料理を選べるようになりました。晩ごはんに欠かせないのが適量のお酒です。家では好きなアーティストのMVなどを見ながら、外では友人たちと会話しながら嗜むのが定番。楽しく飲むとひときわ美味しく、量も自然とほどよくなるようです。お酒とはよいつき合い方ができていると思っています。

    その他に大切にしていること、習慣にしていることはありますか?

    • 田中さん

      ひとつのコミュニティにこだわらないことです。私の場合、バトントワーリングの世界には尊敬し、刺激し合える仲間が大勢います。しかし、ともすれば、その仲間たちとばかり集まって、バトンの話ばかりになり、自分の視野を狭くすることになりかねません。何かのきっかけ、ご縁があって出会った方には心を開いて話しかけます。私が心を開いたことが伝わるのか、あるいは人見知りをしない明るさからか、幸い会話を続けてくれて、親しくなれることが多いです。

      北麓草水

      中学校でコーチをされていますが、若い方たちと信頼関係を築くためにはどうしたらよいとお考えですか。
    • 田中さん

      私自身は、自分を「先生」と思わないように強く意識しています。仮に幼稚園児であっても、コーチをしている私にとっても学びになることや新たな発見があり、別の選手の育成に生かせる視点を得ることができます。特に、練習中は厳しく見て、厳しく注意しなくてはならない場面が多くなります。だからこそ、「教えてあげる」ではなく「教え合う、学び合う」という対等な姿勢を保つことが重要だと思います。相手を思いやりながら指導すると、子どもたちを傷つけないし、親御さんも安心して任せてくださいます。

      自分の価値観を押しつけず、子どもたちの興味関心に寄り添うことも大切だと考えています。私の場合は、身につけた基本技術の質を高めながら、音楽やその他の振りつけは子どもたちが好むもの、憧れるものを選び、工夫しています。「ほかのみんなとは違うことをしている!」という自覚はモチベーションを高め、よい練習、よい本番につながるのです。

      北麓草水

      これからも大切にしたいことや、新たに挑戦したいことはおありですか?
    • 田中さん

      実は先日、初めてファスティングをしてみました。もともと潔癖なところがあってモノが少なく、整理整頓好き。自分自身も整える意味で、専門家の指導のもとトライしてみたのです。ファスティングは期間中だけでなく、前後も重要なのですが、今回は終了後にやや食べ過ぎてしまって反省しています。ただ、食を中心に生活を見つめるよい時間を過ごしました。またファスティングにするかどうかはわかりませんが、自分を整えること、自分に問いかけることには、機会を見つけて取り組んでいきたいと思います。

    「ありがたいことに、家族とか友人とか、いつも誰かがそばにいてくれて、それが心の安定につながっています」と最後におっしゃった田中さん。それもやさしいお人柄ゆえのことと感じました。コーチをしているチームが近々大会に出るというさなか時間を割いてくださり、「私はヘンにまじめなところがあるので、よい気分転換になりました」と笑顔を見せて、その日も練習場に向かわれました。田中さんにもチームの皆さんにとっても、悔いのない大会になることを祈っています。このたびはありがとうございました。(2025年12月22日公開)