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    vol.26

    文筆家・インテリアスタイリスト

    小澤典代さん

    暮らしにまつわる著書多数

    ライフスタイルや籠、布など暮らしの道具についての本を数多く執筆されている小澤さんです。フリーランスのインテリアスタイリストとしての視点やセンスは多くの共感を集めています。暮らしを見つめ考え続けている小澤さんが大切に思うことについてお話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 小澤さん

      なるべく無理なく、リラックスしていることを心がけていますが、同時に鍛錬することも心がけています。

      北麓草水

      リラックスと鍛錬とは、相反することのように感じますが、どのようなことなのでしょうか?
    • 小澤さん

      自分自身のバランスを保つために、その相反することを行なうことが大切だと考えています。リラックスについては、散歩をするようにしています。一日のタイムテーブルが不規則で、根を詰めて仕事をした後には心身ともに疲れているな、と感じることがあります。そんな時は一人で散歩にでかけます。海と山に囲まれた土地に住んでいて、近くには私と気の波長があう場所がいくつもあるの。そんなリラックスできる場所へ行って半日くらいぼんやりと過ごします。そうすると迷いや疲れが自然と解消されるのです。
      鍛錬のほうは、大学のオープンキャンパスで俳句の勉強をはじめました。また人の話を注意深く聞くこと。一語一句話す人がどのような言葉を選び使っているか、しっかり聞くように意識しています。読書も大切なことの一つで、楽しみでもあるのですが、言葉の訓練として難しい言葉を多用している本を選ぶようにして、辞書を見ながら読むようにしています。

      北麓草水

      鍛錬をされるようになったきっかけはありますか?
    • 小澤さん

      今の時代SNSなどで情報のやり取りをすることも多く、私もそのような場では日常会話のような文章を書いています。しかし書き手として文章を書くことを生業としているのですから、きちんと伝わる正しい日本語としての文章を書いていかなければならないと思っています。そのために少しでもボキャブラリーを増やし、言葉への感覚を磨いていたいと思っています。

      北麓草水

      俳句を勉強されるようになって気が付かれたこと、ご自身の変化などはありますか?
    • 小澤さん

      オープンキャンパスでご一緒させていただいているのは、人生の先輩方が多く、皆さんとても熱心でいらっしゃいます。そのような方々が日常で何を感じ、考えているのか俳句を通じて知ることができるのは、とても貴重な時間と経験になっています。
      私が尊敬する俳人の金子兜太さんは、今年で96歳になられます。金子さんに代表される大正、昭和初頭に生まれ激動の時代を生き抜いた方々が語られることには、大きくうなずけることが多いと感じています。自分を律する姿、佇まいや礼儀、受け継がれた形を大切にするなど、表面的には不自由で厳しいように感じられることも、その奥には大きなやさしさがあることを感じます。
      俳句もまた表現において、うれしい、楽しい、悲しい、などの気持ちを表す言葉は直接使いません。そのかわりに季語を用いて、心情を表現するのです。そして俳句の聞き手は作者を深く想い、その季語から心情や情景を感じとるのです。それはなんとやさしく、繊細な精神世界であるのだろうと思いますね。日本人はそのような思いをずっと大切にしてきたのでしょうし、その感性が日本人の心にフィットしているので、今でも広く俳句や和歌が読まれているのだと思います。

    その他に大切にしていること、習慣としていることはありますか?

    • 小澤さん

      香りを大切にしています。子どもの頃からお小遣いを貯めては小さな香水を買ったりしていて、良い香りが好きでした。それを付けると特別な自分になれるような気がしていたのね。身につける香りが大好きで、バラの香りかクチナシ、スズランなどの白い花の香りを使っています。

      北麓草水

      どのような時に香りを身につけるのですか?
    • 小澤さん

      朝起きて顔を洗ったらつけますね。毎日の習慣になっています。つけていると自分では香りを感じなくなるのですが、会った人から良い香りがしますね。と言われると少し嬉しくなりますね。

    目には見えない言葉の力を磨き、会う人に喜びを与える香りを大切にする、大人の女性のお話を聞かせていただきました。最後に小澤さんが語ってくださったのは、ごく普通の人が持っている精神性の高さと美しさ、ささやかな日々の暮らしに寄り添い見つめ伝えて行きたいということでした。これからの小澤さんのご活躍がますます楽しみです。ありがとうございました。