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    vol.38

    デザイナー・アートディレクター

    セキユリヲさん

    テキスタイル、グラフィック、広告と幅広く活躍

    植物や雲、山など自然をモチーフにしたテキスタイルデザインをはじめ、雑誌や広告などのグラフィックデザイン、アートディレクションでも幅広く活躍される、日本を代表するデザイナーの一人であるセキさん。ご自身が中心となって活動する「サルビア」では、日本の伝統工芸や地場産業など、作り手とともに暮らしの中に豊かさや楽しさを提案するもの作りを続けていらっしゃいます。現在は子育てでお仕事をお休みされて、お子様との時間を大切に過ごしていらっしゃいます。ゆったりとした生活から感じていらっしゃること、毎日の習慣についてお話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • セキさん

      子どもと一緒に週3回自主保育の会に参加しています。代々木公園で外遊びを中心にする活動です。その会に参加するようになって、毎日のようにお弁当を作っています。

      北麓草水

      お子様とご自身と二人分のお弁当を作って出かけられるのですか?
    • セキさん

      はいそうです。凝ったことはしないで、毎日おむすびのお弁当を作ります。お米をおいしく食べられるように、白米の真っ白いおむすび、玄米のおむすび、白いご飯にふりかけをまぶしたり、炊き込みご飯にしたりと、毎日おむすびでも飽きないように工夫をしています。子どもはまだ歯が生え揃っていないので、ご飯はやわらかめで食べやすいように炊いて、ふわりと軽くにぎるようにしています。大きさも、小さい手で持ちやすいように作っています。

      北麓草水

      外でいただく手作りのお弁当は、それだけで心も体も満たされそうですね。
    • セキさん

      そうですね。おむすびは日本人の心のよりどころのように感じます。私も子どもも和食が好きで、おかずは和食中心です。野菜を細かく刻んで入れた卵焼き、野菜の浅漬けなどです。

      北麓草水

      取材をさせていただいたこの日もお弁当をお持ちくださって、手作りのおむすびと卵焼き、聖護院大根の甘酢漬けを公園でいっしょにいただきました。おむすびをほおばると口の中でご飯がほろっとほどけて、やさしい口あたりでした。セキさんのお母様が作るおむすびもふわりと結ばれたものだそうで、手が小さいセキさんも自然にそれを受け継がれたそうです。聖護院大根は、セキさんのお母様が畑で丹精こめて作られたものを漬け物にしたそうです。小さなお弁当の中に様々なことが伝えられ、受け継がれていくのだなと思いました。
    • セキさん

      この年頃のこどもたちは、何でも手づかみで食べることが好きですね。食べられる物以外でも、指先で感触や熱さ冷たさ、大きさなど様々なことを感じて、手でつかんで口に持っていって確かめます。手というのは、最も根源的ですぐれた道具なのではないかと思いますね。子どもと過ごしてそんな姿を見ていると、私たちは動物と同じなのだと気づかされます。楽しそうにはしゃいでいたかと思うと、急に眠たくなってぐずって寝てしまったり、ころんで大泣きしていたかと思うと、何かを見つけて笑いながら走って行ったり。生命そのものが持つ、命のエネルギーを毎日見せてもらっています。そんな姿を見ていると、生きるってすばらしい!と心から感じます。

      北麓草水

      育児休暇中で生活が変わられたと思いますが、そこから何か感じられたことはありますか?
    • セキさん

      以前は本当に仕事が中心の生活で、一日の大半は室内で過ごしていましたので、晴れた日には、夕方にきれいな夕焼けが見られることに感激しました。当たり前のことですが、毎日日が昇って沈んで、自然は変化し続けている。人間はその自然の中で生かされているのだと気づかせてもらいました。毎日子どもと散歩をする都会の公園でも、銀杏の葉が黄色く色づいて落葉し、今は、葉のついていない木の姿を見ることができます。木々の枝の間を通り、日の光がたくさん地面に降りそそいで暖かくなると、てんとう虫や小さな虫たちが動き出します。そんな自然のサイクルを肌で感じて毎日を過ごし、楽しんでいます。都会で数多くの野鳥がいることにも気づきました。

    その他に大切にしていること、習慣としていることはありますか?

    • セキさん

      手作り、手を使って作り出すことをとても大切にしています。手芸や編み物、織物が大好きで、いつでも何かを作っていたい、という思いを持っています。今は集中して作る時間がとれないので、短い時間で仕上げられるものを作って楽しんでいます。まだ子どもは小さいのですが、いっしょに遊びながら作って部屋に飾ったりして、作る楽しみを伝えるようにしています。部屋の壁には、鳥の形を切り絵にしたものを飾ってみました。これは紙に絵の具で色をぬって色紙を作ってから、切り抜きました。紙や毛糸、テープなど身近にあるもので、季節や自然を感じるものを作って楽しんでいます。        

      北麓草水

      写真に撮らせていただいたご自宅の壁は、セキさんの手作りの作品が飾られています。この鳥の切り絵は色のグラデーションが美しく、鳥の中に空を感じます。紙に色をぬることで、とても奥行きのある作品になるのですね。
    • セキさん

      制作のためにまとまった時間を作ることが今はできませんが、アイデアを活かして、日常の中でも何かを作っていたいですね。何かを作っていないとストレスを感じてしまうほど、手を動かすのが好きなのです。手を動かして自分で何かを作るのは、大きな満足感や達成感があります。感じたことを形にすること、手を使って作ることが、私の中ではとても大切なことなのだと思います。

      北麓草水

      育児休暇を終えたら、また新しい作品や表現がたくさん生まれそうですね。
    • セキさん

      作りたい!という気持ちが溢れ出しているので、仕事に復帰してもの作りをするのが今から楽しみです。

    子育てをきっかけに、自然を感じながら自然にそったリズムで暮らすことを、心から楽しんでいらっしゃるセキさん。その暮らしから感じて生まれたことを、ご自身の表現として、私たちに見せてくださることでしょう。手を動かす喜び、暮らしの中での手仕事、手が伝えることの大切さを教えていただきました。ありがとうございました。