北麓草水

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みんなの習慣

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セトキョウコさん 増満兼太郎さん

vol.84 セトキョウコさん 増満兼太郎さん

ストックフードブランド「菜と果」主宰

料理家として季節の素材を生かした、心と体にやさしい料理をつくられるセトキョウコさん。革、金属、木、紙、廃材などの素材で、暮らしの道具やオブジェをつくる造形作家の増満さん。東京を拠点に活動されていたお二人が、暮らしの実験のつもりで、山の中川沿いの小さな集落にある家に、仕事と暮らしの拠点を移されて数年が経ちます。ご自身の手で改装したご自宅は、古い日本建築のよさを生かしながら、心地よく開放的な空間です。作品の展示会や、薬草の勉強会などで、様々な人との交流が生まれる場になっています。自然の中での暮らし、日々の習慣について、お話を伺いました。

日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

セトさん
ここでの暮らしは、自然がとても近くにあるので、自分と植物が近くなったことを感じています。多くの植物を食すことができ、私たちの生活に役に立つことを教えてもらい、植物との関わりも深くなりました。季節によってたくさん生えるヨモギ、ミントなど、庭のハーブや野草を収穫して、蒸留機を使ってハーバルウォーターをつくっています。夏には勢いが強くて、手に負えないと感じていた草も、蒸留機でエキスを抽出することで、植物を活かせる楽しみができました。季節によって、色々な植物で試すのが楽しみです。同じ植物でも収穫した時期で香りの違いがあり、いつも新鮮な発見があります。使い方も色々と考え試してみて楽しんでいます。
北麓草水
セトさんは、季節の植物を使った薬草講座を、薬草専門家の方を講師にお招きして企画開催されています。お料理のお仕事とともに、植物を暮らしに生かす取り組みを始められました。広々としたリビングには、アルミ製の鍋を使ってつくった冷却器と圧力鍋を組み合わせてつくった蒸留機があります。息子さんがまだ幼い頃に、増満さんが料理に興味を示す息子さんのために、ガスコンロを備え付けた小さなキッチンをつくってプレゼントされたそうです。そのキッチンを借りて蒸留作業をされています。
北麓草水
増満さんにもお伺いします。日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?
増満さん
パーマカルチャー(恒久的持続可能な環境をつくり出すデザイン体系)を自分たちなりの形で実践したいと思っています。それには自然のシステムをよく観察すること、昔の人の暮らしをよく知ること、そしてその知恵を現代の自分たちの暮らしに融合させていくことだと言われています。何か必要なもの、欲しいものがあれば、よい商品を探すのではなく、自分で工夫をしてつくってみるようにしています。試行錯誤して自分でやってみる、その過程で新たな発見があり、物をつくりながら自分を掘り起こして、自分が成り立っていく様子が面白いと感じています。
北麓草水
アトリエ、そして作品のブランドの名前でもある House. では靴、鞄、アクセサリーを、暮らしの道具であり「家具」として捉え、オブジェ、版画の作品を、風が出入りする「窓」と表現されているのが、物づくりの考え方と幅の広さを表しているようで、とても素敵ですね。建築を学ばれたそうですが、「家」(House)が物づくりのテーマになっていらっしゃるのでしょうか。
増満さん
人が暮らすための家、住宅に興味関心がありました。建築家が頭で難しいことを考えて設計する家ではなく、住む人の暮らしがあっての家がつくりたかったのだと思います。それはいわゆる家の形をしていなくてもよいのかもしれません。それを使う人の「私的領域」である空間、暮らしの道具は「家具」。そんな考えもあって靴をつくり始めました。
北麓草水
様々な素材を使い、一つ一つ手作業を中心につくられる作品の持つあたたかさ、軽やかさ、人に近い感じの理由が少しだけわかったような気がします。
  • セトキョウコさん 増満兼太郎さん イメージ
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その他に大切にされていることはありますか?

セトさん
気候のよい季節には、毎朝歩くことを習慣にしています。東京で暮らしていた時は、買い物をしたり、出かける時には駅まで歩いたりと、意識をしていなくても生活の中でよく歩いていました。しかし、こちらに引っ越してからは、移動手段がほとんど車となり、歩くのは家の中とその周りだけになってしまいました。ある時になんとなく体が重くて、体の芯が鈍っているように感じました。これはよくないなと思って、朝の散歩を始めました。
北麓草水
どのくらいの時間歩かれるのですか?散歩を始めてよかったことがあれば教えていただけますか?
セトさん
だいたい一時間弱歩いています。よいことはたくさんあります。まず体調がよくなり、体の中心に芯が通り、体全体が整ったように感じます。それは、頭のてっぺんから、きれいな水がまっすぐに体の中心を流れているようなイメージを、自然に持つことができる状態です。散歩の時間は、自分自身に目を向けられる貴重な時間です。毎日同じ時間に歩くので、何かいつもと違うと、すぐに感じることができます。自分で今日の自分の状態を図ることができ、バロメーターのようになっていると思います。
北麓草水
お二人で一緒に散歩することもありますか?
増満さん
歩く速さや歩幅が違うので、一緒に並んで歩くということではないですが、僕もできるだけ時間をつくり歩くようにしています。散歩で地域を知ることができたり、周りが見えてきて考えの視野が広がったり、暮らしが落ち着いてきたと思います。それから、家の裏にある畑と家の周りの見回りも僕の日課です。
セトさん
散歩で植物を見つけたり、季節の花の自生地を知ったり、田んぼのおたまじゃくしの成長を観察したり、楽しみがたくさんあります。私はよく立ち止まって草を摘んだりするので、増満の姿を見失わないように気をつけています。この辺りは野生動物に遭遇することもあるので、一緒に歩くと心強いです。

自然豊かなこの地に移住をされて4年が経ち、決して便利とは言えない環境で、ご自分たちでアトリエと暮らしの場を創造し、その場をどんどん育てていらっしゃるお二人です。その姿とお話からは、暮らし、仕事、子育てを心から楽しんで、そのどれもが繋がっていて、毎日が新たな発見であり経験である喜びにあふれているように感じました。その調和からよい流れや風が生まれて、ここにたくさんの人が集まり、出会いが生まれているようでした。毎月3日間、オープンギャラリーでお二人の暮らしぶりに触れ、素敵な人や作品に出会うことができます。毎月の日程は、インスタグラムontheriver_lifeでご覧いただけます。私もまた小旅行で伺いたいと思います。ありがとうございました。

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