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    vol.107

    RELIEFWEAR

    鳥羽由梨子さん

    衣服の企画・販売

    “身につける養生”をテーマにオリジナルウェアの企画開発をされ、ご自身でも自然な体の在り方を日々探究し、学ばれている鳥羽さん。長年手仕事を大切にしたものづくりに携わるお仕事をされ、昨年ご自身のブランドRELIEFWEAR(リリーフウェア)を立ち上げられました。身につけることで体が心地よいと感じ、自然からインスピレーションを得ているという美しい色使いで、すこやかさを大切に考える女性たちの支持を集めています。RELIEFWEARの開発にまつわるお話と、日々の習慣について伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 鳥羽さん

      ブランドテーマでもある「養生」することを大切にしています。江戸時代に書かれた、貝原益軒の『養生訓』を愛読し、学び楽しみながら実践することもあります。

      北麓草水

      養生という言葉は聞くことがありますが、養生訓とはどのような教え、考えなのかわかりやすく教えていただけますか?
    • 鳥羽さん

      貝原益軒は江戸時代の儒学者、本草学者で、もともと病弱でしたが、養生することで長生きしました。80歳をすぎてから自らの健康長寿の心得を本にまとめたものが、『養生訓』です。真に人生を味わうには、日々の心がけと生活習慣が大切であると説いています。その中で、“心の静と身体の働”という言葉が好きで、心は平に静かになれば豊かで楽しい。よく働き身を動かせば血気が巡って病気にならないと、繰り返し『養生訓』の中で説かれています。今を生きる私たちにも、当てはまることが多いです。

      北麓草水

      鳥羽さんのつくられたRELIEFWEARのウェブサイトには、「養生通信」というコンテンツがあり、季節ごとに養生について情報発信をしていらっしゃいますね。鳥羽さんが養生に関心を持つようになったきっかけについて、お話を聞かせていただけますか?
    • 鳥羽さん

      以前からおなか(腸)が弱く、疲れや無理がたまるとおなかが痛くなったり、腸の調子が乱れたりしていました。その度に対症療法で薬を飲んで痛みを抑え、やり過ごすようにしていました。もっと根本的なところから、体を整えたいと感じていた時に、虫垂炎を発症し、手術をすることになりました。手術は無事に済んだのですが、今まで身につけていた服が手術跡の傷に触って痛いと感じることや、ウエストのゴムがおなか(胃腸)を締め付けていることが不快に感じるようになりました。

      北麓草水

      体調を崩され、手術をしたことでより体の変化や体の感覚を感じられるようになったのですね。
    • 鳥羽さん

      今までも体はメッセージを発していたのだと思いますが、それに気づく余裕やセンスが足りなかったのかもしれません。日々の体の使い方、心がけ、毎日食事や睡眠などを大切にする養生という考え方も、この頃に出会いました。手術後に感覚が敏感になったのがきっかけで、ストレスのない衣服はないものだろうか、と体や姿勢・衣服についても探究し始め、その中で日本の伝統的な民族衣装や文化への興味が次々と湧いたのが、テーマの「身につける養生」にも繋がっています。写真が残っている明治時代初期の庶民の姿を見ると、立ち姿や衣服から下半身が安定しているように見えます。着物、野良着、仕事着など和服はどれも「丹田」と呼ばれる身体の中心部分や骨盤の位置で、帯や紐を締めていました。東洋では昔から理想の体の状態である、「上虚下実」という言葉があります。上半身は力が抜けリラックスしていて、下半身はどっしりとしている状態です。昔の日本人はその理想的な自然な姿勢に近いと感じました。

      北麓草水

      RELIEFWEARで販売されている「TANDENPANTS (丹田パンツ)」は鳥羽さんの体験から生まれたものなのですね。

    その他に大切にしていること、習慣としていることはありますか?

    • 鳥羽さん

      仕事では机に向かっている時間が長いので、体を動かすようにしています。月に2回ほど、身体講座や少人数制のヨガ教室に通い、季節に合った養生法やヨガ、セルフケア方法を教えていただいて、季節や環境によって少しずつ変化する自分の体を感じ、調整するようにしています。また週に1~2回は、家の周りを30分くらいかけて散歩しています。

      北麓草水

      この辺りは、木々の緑が多く、小川が流れていて畑もあり、自然豊かな環境ですね。散歩していて、気持ちがよさそうですね。
    • 鳥羽さん

      散歩は体全体、特に足を動かすので、適度な運動になります。それと同時に自然を感じる時間でもあり、私にとってお散歩養生は大切な時間になっています。歩くことで「身体の働」になりますし、思考を止めて自然を感じることでリラックスし、「心の静」に自然となれます。そんな時に新しいアイディアを思いついたり、気づくことがあったりします。散歩はデスクワークで上半身を使いがちな私たちの体を整えてくれ、「上虚下実」の状態にも繋がるかもしれません。

      北麓草水

      自分の生活を振り返ると、毎日座ってPCに向かい、頭、目、口(会話)など上半身ばかりを使っているようです。
    • 鳥羽さん

      私はずっとその状態が続くと、モヤモヤ、イライラを感じて頭に血がのぼり、気持ちが焦って胸が詰まるようになることがあります。そんな時は、丹田(体の中心といわれ、へそ下3寸(9cm)にある)を意識して深呼吸をして気持ちを沈めるようにしています。できるだけ心が落ち着くような、静かな1人の時間も持つように心がけています。体を緩めることも大切なので、朝晩ストレッチポールを使って、肩甲骨まわり、骨盤の調整をしています。お風呂に入る時は、湯船で足を揉みほぐし、仙骨(尾骨の上にある逆三角形の骨)にシャワーを当て温めるようにします。そうすると循環がよくなり、リラックスに繋がります。当たり前のことを積み重ねて、その時の体の声を聞いて必要なことをするのが大事だなと感じています。

      北麓草水

      たくさんの具体的な養生方法、からだのケアについて教えてくださりありがとうございます。
    • 鳥羽さん

      ウェブサイトでも私が学んでいること、勉強中のことをシェアして、みなさまの日々のすこやかさのお役に立てればと思っています。

      北麓草水

      RELIEFWEARの定番の靴下「KAIHŌ SOCKS」をつくられている新潟の「くつ下工房」を支援するためのクラウドファンディングを、鳥羽さんが立ち上げられました。詳しくはこちらをご覧ください。

    ご自身の体験したことから生まれたものづくり。大変なことや困ったこともすべて受け入れて、次に進む力にし、それを多くの人のために役立つものづくりや発信をされている、鳥羽さんの誠実なお人柄を感じるお話でした。以前はウィークポイントだと思っていたことは、弱点ではなく自分の体や心からのメッセージやサインと捉えるようになったとお話くださいました。自分の体と心の本当の声を聞いて、疲れやストレスに早めに気づき、無理をしないように心がけているそうです。鳥羽さんの開発された「TANDENPANTS」を身につけてみると、窮屈なところが全くなく、おなか(丹田)に意識が向き、自然に姿勢がよくなるように感じました。ひとりひとり違う、自分の自然な心身の在り方を感じられるようになりたいと思いました。ためになるお話をありがとうございました。(2021年10月20日公開)