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    vol.112

    綯屋 naiya

    横畠梨絵さん

    ほうき職人・草に関する手仕事

    ほうき職人として8年間働き、ほうきをつくる技術を身に着けて2021年春に独立した横畠さん。現在は、北関東でほうきの材料となるホウキモロコシを、農薬など使わず栽培するところからほうきづくりをされています。また日本に古くから伝わる草を綯う(なう)技や、それぞれの土地に伝わる風習も探求、しめ縄や草を使った造形作品も手掛け、草を使う造形作家としても注目をされています。使いやすく美しい横畠さんのつくるほうきは、全国のセレクトショップなどで大変人気です。春を待つホウキモロコシの畑を見せていただきながら、日々の暮らし、ほうきのある暮らしについてお話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 横畠さん

      習慣にして続けているのは、毎朝仕事の前にラジオ体操をすることです。小学生の時からなじみのある体操で、体が動きを覚えていますし、1回6分ほどで全身を動かせるので、とても手軽で毎日続けています。

      北麓草水

      ラジオ体操は、夏休みの朝や学校の体育の時間に誰もがしたことのある体操ですね。年齢を問わず誰でも気軽に取り組めて、とてもよく考えられた体操であることが大人になってからわかりました。
    • 横畠さん

      そうですね。それから、歩いて行けるところに温泉があるので、週に1回は足を運びます。

      北麓草水

      それは羨ましいですね。温泉に入ると何か変化を感じられますか?
    • 横畠さん

      アルカリ度の高い透明なお湯で、入った後は肌がしっとりしてツルツルになります。仕事では体を使い、手先の細かい作業が多いので、肩がこり、体がこわばってしまうのですが、温泉に入るとリラックス効果もあって、こりがほぐれて楽になる気がします。住んでいる土地から湧き出ている温泉なので、体に染み込むような気持ちになります。食べるものと同じで、この土地で育った野菜やきのこ、山菜などを食べることで、土地のエネルギーをいただいているというすこやかな気持ちになります。たまに、猟師さんが獲った猪の肉をいただくことがあり、自分は生かされていることに感謝の気持ちが湧いてきます。

      北麓草水

      横畠さんは、ほうきの材料となるホウキモロコシを育てるところから手掛けていらっしゃいます。土地とのつながりや品質へのこだわりを感じます。
    • 横畠さん

      現在国内では材料となるホウキモロコシはほとんど栽培されていないので、自分で育てるしかないのが現状です。農家としての経験がないので、いろいろな人に教えてもらい試行錯誤しながらやっています。育ち方や収穫のタイミングで、材料としての品質が変わってしまいます。自然相手のことなので、種まきをする春から収穫の終わる夏の終わりまでは毎日気が抜けません。

      北麓草水

      ホウキモロコシとは、どんな植物なのか教えていただけますか?
    • 横畠さん

      ホウキモロコシは、イネ科の植物です。食用ではなく、花が咲いた後の穂先を使ってほうきをつくるために栽培されてきました。また畑で作物を育てた後にホウキモロコシを栽培することで畑の土の物理性をよくし、ホウキモロコシを緑肥*にして土の力を回復させることでうまく循環させていました。ひと昔前は、日本中のあらゆる地域で栽培されていました。*緑肥…栽培した植物をそのまま田畑にすきこんで肥料とするもの。

    その他に大切にしていること、習慣としていることはありますか?

    • 横畠さん

      無理に何かをするのではなく、自然と共に生きているという感覚を大切にしています。私が育てているホウキモロコシを例にしても、種をまいて発芽をして収穫できるようになるまで、数ヶ月かかります。その間も天候や生育状態など、状況を見ながら畑の手入れをします。人間にできることは限られていて、自然の営み、リズムに任せることの方が多く、難しさや厳しさを感じます。その中でも畑から見る自然の美しさ、力強さにいつも感動を覚えます。そして、今暮らしている場所は何でもすぐに手に入る都会の便利な暮らしではないので、身の回りにあるものを大切にして活かすということを自然にするようになりました。

      北麓草水

      例えばどんなことをされているのか、教えていただけますか。
    • 横畠さん

      包装紙や紙は一度使われたものを取っておいて、再利用します。

      北麓草水

      ひと昔前の私たちの祖母の世代は、そうしていましたね。包装紙はきれいに畳んで箱に入れてあり、必要な時に再利用していましたね。
    • 横畠さん

      ほうきを納品する時、以前は新しい包装紙で包んでいたのですが、今は可能な場合は再利用の紙を使うこともあります。

      北麓草水

      横畠さんのつくるほうきは、細かなところまでとても丁寧で、美しく作られています。ほうきをつくる上で大切にしていること、またほうきの魅力をお話いただけますか?
    • 横畠さん

      自分のつくるものはなるべく自然に還るものを使ってつくりたいと思っています。からむし*1などの植物をおひき*2して糸をつくり、装飾に使ったり、植物で糸を染色して、ほうきを束ねる糸に使ったりしています。自然に囲まれた環境で暮らしているので、自然とそうなったのだと思います。美しい自然の産物に人の手技を加えることで、より美しくなると考えています。

      *1 からむし…イラクサ科の多年草で苧麻(ちょま)とも呼ばれる。からむしからとった繊維は高級な織物になる。
      *2 おひき…苧引き。からむしから植物の繊維を取り出す作業のこと。

      ほうきの魅力は、様々な種類があっていろいろな使い方ができるところかな、と感じています。床を掃くほうきが一般的ですが、柄の長いものと短いものがあります。その人に使いやすい大きさ、長さ、形が必ずあるので、ご自分の体と暮らしに合うほうきを選んで使ってみていただきたいです。昔ながらの日本家屋だけではなく、マンションの部屋でもほうきはとても使いやすいと思います。軽くて、使いたい時に手軽に使えますし、掃除をする音も静かです。天井や壁の埃を払うのにもとても便利です。小さなものは、洋服ブラシやテーブルほうきに使えます。ほうきは暮らしの中の様々なシーンに入っていくことのできる、魅力のある道具だと思っています。

    種を撒き、育て、収穫して人の暮らしの道具をつくる横畠さん。お話を伺っていると、自然のリズムと循環の中で命をつなぎ、それぞれの土地で暮らしを紡いできた人たちの原点を見るような気持ちになりました。成長すると2mにもなるホウキモロコシを扱い、軽トラックを運転して畑に向かう横畠さんは、つくられる作品と同じようにしっかりした芯を持ち、しなやかで丈夫、そして丁寧で繊細な感性をお持ちの方でした。横畠さんの作品は4月28日(木)から5月9日(月)まで、外苑前「ザ・ヤード」で開催される展示販売会でご覧いただけます。会期中の5月7日(土)に、横畠さんのワークショップが開催されます。