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    vol.114

    音楽家・3日満月

    権頭真由さん・佐藤公哉さん

    画家を志した後に音楽の道に転向した佐藤さんが学生時代にはじめたバンド「表現(Hyogen)」の活動に、音楽学を学んでいた権頭さんが加わったことがきっかけで、お二人での音楽活動を開始されました。デュオ「3日満月」としての作品制作や演奏会、子どもたちと創る音楽サーカス「音のてらこや」など様々な活動を形にとらわれることなく続けている権頭さんと佐藤さん。その音楽の芸術性と活動は国内外のアーティストから多くの支持を集め、映画やダンス、舞台などの音楽制作を数多く手掛けていらっしゃいます。権頭さんは、今春はじめてのソロアルバムを発表されました。また、佐藤さんが立ち上げたプロジェクト「Torus.vil.(トーラスヴィレッジ)」では、郷土芸能のリサーチと体験から音楽を生み出す活動を行ない、芸術祭などで作品を発表されています。お二人の創造の源につながる、日々の習慣についてお話を伺いました。

    日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 権頭さん

      幼い頃から眠っている間によく夢を見ます。朝起きてその夢を思い出し、記憶することが習慣になっています。パートナーの公哉さんにその日の夢を話すのですが、ただ聞いてもらうだけで自分の中に夢が記憶として定着されるような気がします。

      北麓草水

      目覚めた時には、おもしろい夢を見たなと覚えていても、あっという間に忘れてしまうことが多いような気がします。夢には自分の潜在意識が表れ、大切なことが隠されているのかもしれませんね。権頭さんのソロアルバム「夢みる耳は夜ごと月を包む」は夢をテーマにした作品集だと伺いました。
    • 権頭さん

      数年前に、生活と制作の拠点を東京から長野に移しました。東京での生活は日中に多くの人と会うこともあり、自分が意図しなくてもたくさんの情報や刺激の中で暮らしていたのですが、長野に移住してからは家族以外の人と会う機会も自然に少なくなり、自分と向き合う時間がとても増えました。すると朝に記憶した夢の印象や余韻をまとったまま、1日を過ごす日がでてくるようになりました。ピアノを弾くことは毎日の習慣ですが、そんな日は夢の印象やイメージをピアノで弾いて、最初は手遊びのように楽しんでいたのです。

      北麓草水

      権頭さんの見た夢が、ピアノの音に乗って、形を変えて音楽として表現されたのですね。
    • 権頭さん

      そんなことを続けていたところ、公哉さんが音を録音して残したらいいのではないかと提案してくれて、録りためるようになり、今回のソロアルバムにつながりました。

      北麓草水

      作品を拝見、拝聴しましたがとてもきれいな音ですね。その一方で一曲一曲音の繊細なニュアンスを大切にされていると感じました。また一曲ごとに幻想的な絵が添えられていて、音のイマジネーションが絵によってさらに広がるようで、宝箱を開けたような驚きを覚えました。
    • 権頭さん

      録音と音のデジタルワークは公哉さんが担ってくれました。手遊びのつもりで弾いていたものが、作品として形になりとても感謝しています。この絵は、イスラエルの振付家インバル・ピントさんが私の夢からイメージをして描いてくれました。仕事をきっかけに知り合って様々な話をする中で、私が見る夢の話をしたところ、彼女がとても面白がって、もっと聞かせてと聞いてくれたことが、私が自分の夢に関心を向けるきっかけになりました。作品としてまとめることになり、彼女に連絡をしてアルバムの為に小さなイラストを描いて欲しいとお願いをしたところ、一曲一曲にその曲のイメージを絵にした素敵な作品が届いたのです。そして「半分水に浸かった彫刻庭園」では彼女にとって初のアニメーション作品をつくってくれました。

      北麓草水

      芸術家どうしの心の交流を感じるエピソードですね。夢を作品として形にしたことで、実生活または見る夢に何か変化はありましたか。
    • 権頭さん

      夢というとても個人的で形のないものを作品として形にできたのは、思いもかけず多くの方が真剣に関わってくれたお陰だと感じています。自分では取るに足らないと思っていた夢や、目的なく何となく残しておいたものを一つの作品として形にできたことは、大きな喜びであり発見でした。作品になった夢で、今までに何度も繰り返し見ていた夢があります。その夢の中でいつも私は少し後ろめたいような気持ちになっていたのですが、その夢を曲として表現し作品にした後に見た同じ夢の中の私は、後ろめたい気持ちを抱かなくなりました。

      北麓草水

      不思議なお話ですね。夢と現実はお互いに影響を与え合っているのかもしれませんね。

    佐藤さんが日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • 佐藤さん

      毎朝体操をしています。朝食の前に、チベット体操、いくつかのヨガのポーズ、逆立ちなどをしています。

      北麓草水

      体操をされるようになったきっかけがあれば、教えていただけますか。また体操をされるようになって、何か変化はありますか。
    • 佐藤さん

      子どもの頃から体を動かすのが好きで、朝体を動かすと気持ちが良いので続けています。その時に自分に合っていると感じることを続けています。唄を歌い楽器を弾くので、基本的な体力をつけ、いつでも体を整えて身体感覚は磨いておきたいと思っています。

      北麓草水

      佐藤さんは幼少の頃から画家を志していらしたそうですが、音楽の道へ転向されるきっかけは、どのようなことだったのですか。
    • 佐藤さん

      小さな頃から絵を描いたり、何かをつくったりするのが好きで、高校生になっても絵の道に進もうと考えていました。北海道出身なので、夏はサッカー、冬はスキーで体を動かすことも大好きでした。美大への受験勉強をしている時に、このまま座って絵を描いていることに疑問がわき、高校時代からバンド活動をしていたこともあり、もっと体を使う創作活動がしたくなって、音楽の道に転向しました。

      北麓草水

      自分の体の声を聞いての転向だったのですね。身体性を大切にされる現在の佐藤さんの創作活動にもつながるお話ですね。伝統的な文化、芸術に着目したプロジェクト「TorusVil」を始めたきっかけをお話しいただけますか。
    • 佐藤さん

      新潟で3年に一度開催される大地の芸術祭に、2015年アーティストとして参加した時、現地に伝わる祝い唄を聴いたのがきっかけになりました。それまで自分がテレビ、ラジオ、CDなどで知っていた民謡とは全く違う、地元の方々が生活の中で歌い継いでいる唄に初めて触れ、衝撃を受けました。唄や祭囃子を教えてもらい、自ら歌い体を動かす、その体験を元にして作った作品を「サウンドダイアログ」という企画の中で発表しました。2019年には三陸国際芸術祭に参加し、三陸に滞在して郷土芸能を習いながら作品を制作しました。

      北麓草水

      その土地に身を置いて、遠い昔から脈々とそこに根付いている音楽、リズム、表現などを体験されているのですね。
    • 佐藤さん

      都市型生活での音楽は、ステージ化、商業化されたものがほとんどです。限られた地域性を保ちながら、社会の一部としてずっと歌い続けられている唄がまだ日本にも各地にあること、それを体験することは心が震え感動を覚えます。商業化されていないそのような文化、芸能がある社会で生きることは豊かであると感じます。

      北麓草水

      東京から拠点を移されて変わったことはありますか。
    • 佐藤さん

      自由な時間が増えたので、バイオリンのレッスンを受け始めました。民謡も習い始めようと思っています。
    • 権頭さん

      その日の天候や季節によって、私たちの生活が変わることを初めて経験しました。東京で暮らしていた時は、一年中同じペースで生活ができていましたが、長野は冬の寒さが厳しく、季節によってできること、できないことがあるという当たり前のことを初めて経験しました。春の朝は小鳥の声が賑やかなこと、夏の夜のカエルの声がその日の湿度によって全く違うことなど、自然界の生き物たちは自然の変化に反応しながら生きていることを知りました。満月の夜は月明かりで本が読めるほど明るいことも、長野に住んで初めて知りました。

      北麓草水

      これからのお二人の活動やコンサートのスケジュールがあれば教えていただけますか。
    • 3日満月

      ・2022年5月22日(日)長野県松本市なわて通り
       水辺のマルシェ 「3日満月」で出演

      ・2022年6月5日(日)長野県松本市四賀地区
       ヴィオ・パーク劇場 雲水フェス 「KIMIYA SATO MIKUSA BAND」で出演 

      ・2022年6月12日(日)長野県茅野市
       茶会記クリフサイド 権頭真由ピアノソロコンサート

      ・2022年6月22日(水)東京渋谷WWW
       あだち麗三郎コンサートにゲスト出演

      ・2022年7月17日(日)松本市あがたの森文化会館・講堂ホール
      「夢みる耳は夜ごと月を包む」松本公演 阿部海太郎さんを迎えて
       
      *詳しい情報は、プロフィールにある権頭さん佐藤さんのH Pでご確認ください。

    夢や何かの痕跡や気配など、はかなくあっという間に消えてしまいそうなものを大切に拾い上げ作品を生み出す権頭さん。ご自身の体を使い体験することを通し、自分の身体感覚を信じ新たな作品を創作される佐藤さん。お二人の日々の暮らしについてお話を伺っているうちに、全ての人に宿る創造性や自然との関係について思いを巡らせる時間になりました。権頭さんは北麓草水の日本を感じさせる香りと使い心地が好きで、ご自身でも愛用され、海外のお友達のプレゼントにも使ってくださっているそうです。「東京に行く時には店舗に足を運んでいますが、新しくなったオンラインストアも使いたい」とお話しくださいました。今後もお二人のご活躍を楽しみにしたいと思います。ありがとうございました。

    (2022年5月20日公開)