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    vol.121

    Hasu no hana

    フクマカズエさん

    ギャラリー、食堂を運営

    アートギャラリーのオーナーで、キュレイターでもあるフクマさん。改装した古い民家の1階で、小さいながら個性的な空間を生かした展示と、若手作家を中心にしたキュレーションで都内でも注目されるギャラリーを運営されています。また、ギャラリー2階で週末に営業されている「江島食堂」は、プラントベースの厳選素材でつくられるファラフェルサンドとスープのテイクアウト専門店です。キュレーションや広報などのギャラリー運営、食堂での調理など、パワフルに活躍されるフクマさんの日々の習慣についてお話を伺いました。

    Q,日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

    • フクマさん

      ひとつあげるとしたら、ほぼ毎日銭湯にいくことです。

      北麓草水

      内風呂が各家庭にある近年では、毎日銭湯に通われるのは、少数派かと思います。毎日銭湯に通うようになったきっかけがあれば、教えていただけますか?
    • フクマさん

      6年ほど前のことですが、寒い季節に体が芯から冷えてしまうようになりました。寝る前に体を温めたくて、仕事の後に近くにあった銭湯に行ったのがきっかけです。大きな湯船でゆっくり時間をかけて入浴すると、体が芯から温まり体の冷えが改善したように感じました。週に1回から始まり、一日置きに通うようになり、数年前からは毎日通っています。旅行や出張で家を離れる時も、行く先々で地元の人が通う温泉や銭湯に入るようにしています。

      北麓草水

      それは徹底されていますね。銭湯の魅力、習慣にされている理由をお聞かせいただけますか?
    • フクマさん

      銭湯に行くのは、私にとって健康維持と楽しみ、ふたつの理由があるからです。湯船に浸かっていると、体、頭、心がリラックスして、ぼっとしている時に展覧会のアイディアが浮かぶこともあります。

      北麓草水

      仕事場から離れ仕事のことを考えることをやめた時に、アイディアが浮かぶことがあるのは面白いですね。銭湯に行かれるのは、お仕事が終わってからの時間ですか。
    • フクマさん

      そうしています。銭湯に行くことが生活の一部として習慣となり、その時間までに1日の仕事を終わらせることで、メリハリも生まれています。そして1日の疲れは、お風呂に入ってその日に取るようにするのですが、1日中歩き回った日は足を、デスクワークが続いて、肩や首が凝っていると感じる日は、肩や腕、頭をマッサージしています。その後ぐっすり眠ると、次の日に疲れが残ることはほとんどなくなりました。銭湯に行く時はスマートフォンを持たず、情報から離れるようにし、週末は銭湯にあるサウナに入って、一週間の疲れを取るようにしています。また、よく行く銭湯は天然温泉なので、肌にもよい作用があるのではないでしょうか。最近は銭湯でいつも会う人たちとたわいのない会話、世間話をするのが楽しみで気分転換になっています。通い始めた頃は、誰とも話さずに自分の体と対話する時間としていましたが、毎日通っている間に、世代を問わず顔見知りもできました。ほとんどが近所に住んでいる人なので、地域の中に知り合いができ、自分がこのコミュニティーの一員になれたようでとても心強く思います。

    Q,その他に大切にしていること、習慣にしていることはありますか?

    • フクマさん

      ギャラリーのあるこの建物を自分の体を拡張した有機体と考え、自分の暮らしを循環させる試みを行っています。

      北麓草水

      どんなことをされているのか、具体的に教えていただけますか?
    • フクマさん

      野菜クズや果物の皮、使用済みの揚げ油などをコンポストで土に戻すようにしています。週末に食堂を営業しているので、どうしても生ゴミが出てしまいます。コンポストで戻した土を使い、野菜とハーブを数種類育て、それを料理に使用することで循環を生みだしています。硬い茎や玉ねぎの皮など、分解されにくいものは、乾燥させて燃やし、灰にしてから土に戻します。生ゴミが出ない生活はとても気持ちいいですよ。

      北麓草水

      入り口近くにある、大きな木箱がコンポストですか?中はさらさらした黒土ですね。この取り組みが暮らしを循環させるという事へつながるのですね。普段どのように使用され、「建物を体が拡張した有機体と考える」までに至ったのかを教えていただけますか?
    • フクマさん

      主に野菜クズの生ゴミは、まずキッチンに置いてある缶の中に入れて一次発酵をさせます。数週間後一次発酵したものを野外にあるコンポストに移します。野菜クズは細かく切ったほうが、発酵も分解も早いのですが、それは私たちが食物を体に入れる時に、歯でよく噛んで食べると消化によいということと同じなのではないかと思います。次に発酵した野菜クズを土に入れて、土の中で生きている微生物に分解してもらうのですが、微生物が元気で働きがよいと、数日で分解されて堆肥になります。その働きは私たちの小腸、大腸で腸内細菌が食べたものを分解して、栄養として体に取り入れるのと似ていると感じています。そんなことから建物を自分の体を広げたものと考えるようになりました。

      北麓草水

      生ごみとして、使った揚げ油もコンポストに入れてよいのですね。
    • フクマさん

      微生物は油が好きなようで、たまに適量入れると分解が早くなりますよ。日々、その日に出た生ゴミをコンポストに移して1日が終わります。夏場に生ゴミの匂いを心配することもなく、生ゴミがなくなることで、燃やすゴミに出すものがとても減りました。そして、現在生活の中で出るのはプラスチックゴミが一番多いことに気付き、ゴミをもっと減らしたいという思いにもつながりました。コンポストの中の、目には見えない微生物の働きを知ることで、私が何かを食べたくなるのは、体の中の微生物がそう訴えているのかもしれないと考えるようになりました。

      北麓草水

      とても面白い考え方ですね。微生物によって物質が分解されて、土に戻りまた次の命を育むという循環は、自分の体の中、そして地球上あらゆるところで絶え間なく行なわれている営みで、それを常に意識できる暮らしはとても豊かだと感じました。これから取り組もうとしている試みはありますか?
    • フクマさん

      次は雨水利用をしてみたいと考えています。雨どいに内水タンクを設置して、ハーブや野菜の水やりに使うところから始めたいと思います。

    ギャラリーとして改装された建物は、その役割だけでなく、循環する家として進化を続けています。まるで、フクマさんの思索と表現の場として、制作途中の作品のように感じられました。また、食堂でいただける、たっぷりの野菜とひよこ豆のコロッケに自家製ハーブが美しく飾られたファラフェルサンド、季節の野菜でつくられた滋味深く優しい味わいのスープは、細やかなところまでを大切にするフクマさんの心遣いを感じる、目も心もお腹も満たされ元気になる美味しい逸品でした。また味わいたいと思います。ありがとうございました。(2022年12月20日公開)