北麓草水

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みんなの習慣

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安部さん

vol.78 安部さん

カネサオーガニック味噌工房<br>カネサオーガニック味噌工房松陰神社前 店主

安部さんのご実家は、宮城県で25年間オーガニック(農薬や化学肥料を使わない有機農法)で農業を営んでいる農家です。自社栽培の安心安全な米、大豆を使っており、発酵を熱やアルコールで止めていない「生」味噌や調味料などを丁寧に手作業でつくられています。つくり手から食べてくれる人に直接届けたいという思いから、1年半ほど前に、世田谷区の松陰神社前商店街にお店をオープンされました。人の交流や暮らしの香りを感じるお店を訪ねてお話を伺いました。

日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

安部さん
日々の習慣ではないですが、旅行が好きで年に数回旅行をしています。最近では年に2回ほどタイに行っています。現地で味噌づくりのワークショップを開いたりもしています。
北麓草水
タイでワークショップを開かれたのですね。どんな様子だったのかお話を聞かせていただけますか?
安部さん
東京で開催した外国人向けのワークショップに参加してくださったタイ人のご夫婦が、タイでもワークショップを開いてみないかと誘ってくださったのです。学生時代にタイに留学していたこともあり、タイ語を話せるのでやってみようと思いました。日本でのワークショップとは違って、タイ人のシェフを招いてタイ料理に味噌を使ったオリジナル料理をつくってもらい、参加者に食べてもらいます。そうすることで、数カ月後に出来上がるワークショップでつくった味噌を、普段の料理に活かしてもらえます。
北麓草水
タイにも麹を使った発酵食品があるのですか?
安部さん
タイもそうですが、アジアの国々には発酵文化が根付いています。日本ではニホンコウジカビから麹がつくられますが、タイや他のアジアの多くの国はクモノスカビという種類のカビから団子状の麹をつくります。
北麓草水
タイでのワークショップや海外の方に味噌づくりを伝えることの、難しさや楽しさがあれば教えていただけますか?
安部さん
発酵は生きている菌の働きによるものなので、その土地の気候や風土で働きが変化します。タイでは東京や宮城に比べて気温が高いところも多いので、発酵が進みやすく味噌の仕上がりも早くなります。逆に寒いところだと発酵、熟成に時間がかかります。それが難しさであり、楽しさでもあります。またその国や地方の料理を知ることができるのは、大きな収穫ですね。
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その他に大切にしていること、習慣にしていることは何かありますか?

安部さん
味噌汁を毎日欠かさずに飲んでいます。
北麓草水
小さい頃からずっと続けていらっしゃるのですか?
安部さん
実家で暮らしていた時は、母がつくってくれた食事で味噌汁を毎日飲んでいました。会社員時代はとても忙しく、食生活も不規則になりがちだったのですが、電話で母にそんな日々の様子の話をすると必ず「とりあえず味噌汁だけは飲みなさい。」と言いました。それがいつも心にあって、何かなくともとりあえず味噌汁を飲むことが習慣になっています。
北麓草水
美味しいおすすめのつくり方や、具材などあれば教えていただけますか?
安部さん
定番や固定観念にとらわれずに、いろいろな使い方や食べ方を楽しんでもらいたいと思っています。よい材料で時間をかけてじっくり発酵させた生味噌は、それだけで大豆の旨味と糀の甘みが十分にあります。出汁を取らなくても味噌をお湯に溶かすだけで、味わい深い味噌汁になります。朝すっきりしたい時などは、器に梅干しと味噌を入れて、お湯を注いだ味噌汁を飲みます。いつも和風だしではなく、鶏ガラスープやコンソメスープに味噌を入れて味噌スープにしても美味しいですよ。自由な発想で味噌を使って楽しんでいただきたいと思っています。
北麓草水
出汁を取らなくても美味しいというのは、初めて知りました。早速今日にでも試してみたいと思います。お店の壁には味噌やオリジナルの調味料を使って、安部さんがつくられた料理の写真がレシピ付きでたくさん貼られています。料理のバリエーションの多さと、アイディア溢れるアレンジでどれも美味しそうです。安部さんの味噌の美味しさや楽しさを伝えたいという気持ちを感じます。
安部さん
このお店では商品を買っていただく以上に、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。こんな使い方をしたら美味しかったよとか、こんなのがあったらいいな、とお客様の声を直接聞くことができるのが何より大きいですね。一人暮らしで、パック入りのものを買っても使いきれない、というお話を聞いて味噌の量り売りを始めました。
北麓草水
お話を伺っている間にも、お店には容器を持って味噌を買いに来る常連さんがいました。一昔前は味噌や醤油、豆腐など家から容器を持って買いに行くものでした。今はスーパーやコンビニエンスストアには、工場でつくられパッケージされた加工品ばかりが並んでいて、それを買うのが当たり前になっています。安部さんのお店では、原材料からつくっているつくり手から直接好きな量を計ってもらって買うことができるのです。懐かしさと新しさがあるこの街で、安部さんのお店が愛され、必要とされていることを感じました。
安部さん
この街に支えてもらっています。ここでは街のことや他のお店のことまで気にかけ合っていて、外から来た私も受け入れてもらっています。それから地元の有志ですぐ裏にある畑で野菜やハーブを育てています。畑で採れた野菜は、第一日曜日に開かれる、蚤の市に合わせてバーベキューをしたり、夏にミントがたくさん収穫できると、そのミントを使ったモヒートを出すお店があったり、みんなで楽しんでいます。畑で育てた大豆を収穫して、それを使った味噌づくりのワークショップもやってみたいと考えています。

2017年9月にお店をオープンされてまだ新しいお店ですが、店内には生味噌をはじめとした自家製オリジナルの調味料や甘酒がたくさん並び、それらがつくられている所や説明も丁寧にされています。小さなお店からたくさんのものと物語が発信されていて、そこに暮す人と街にすっかり溶け込んでいる様子です。それは25年に渡りオーガニック農家の先駆けとして続けてこられたご実家のものづくりと、この街の歴史や暮らしを安部さんがこのお店を介して繋いでいるからなのだと感じました。教えていただいた出汁を取らない味噌汁は、味噌そのものの香りと風味が感じられとても美味しいものでした。ありがとうございました。

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