北麓草水

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みんなの習慣

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勅使河原香苗さん

vol.105 勅使河原香苗さん

イラストレーター・ガーデンティーチャー<br>子どもたちと自然を見つめ、イラストで表現し伝えている

自然の中で過ごし自然と関わることで、子どもたちが見せる瑞々しい感性。それを引き出し、また自分たちが自然、地球、大きな繋がりの中にいることをわかりやすい形にして、イラストやワークショップで伝えることをライフワークにされています。勅使河原さんとご家族が一緒に野菜や果樹、ハーブを育てている埼玉・秩父にある畑を訪ねてお話を伺いました。

日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?

勅使河原さん
週末を中心にこの畑に来て、野菜を育てたり土づくりをしたり自然に触れるようにしています。ここは父の生まれ育ったところで、今は祖母が暮らしています。祖母が高齢になり、父と母も週の半分くらいはここで過ごすようになりました。普段は父が畑の手入れをしてくれていています。
北麓草水
手入れが行き届いたきれいな畑ですね。勅使河原さんは畑仕事がお好きでいらっしゃるのですね。
勅使河原さん
父はとても仕事が丁寧なので、畑にもそれが表れているのだと思います。私は土や植物、自然に触れることが大好きなので、畑仕事も楽しんでいます。この土地は先祖代々耕してきた大切な場所で、それを受け継いでいきたいという気持ちもあります。
北麓草水
畑仕事で一番の楽しみや喜びを感じられるのはどんなところでしょうか?
勅使河原さん
もちろん作物が育って収穫する喜び、自分で育てた野菜をいただく喜びは大きいです。出来た野菜や果実を、食べた人がおいしいと言ってくれる時はとても嬉しく感じます。またそれ以上に、撒いた種が芽を出した時や、植えた苗が土に根付いたことを実感した時に一番喜びを感じます。
北麓草水
収穫の喜び以上に植物の生命力を感じる瞬間、ともすると見逃してしまい、気づかないような変化を感じ取り、そこに命の輝きを見ていらっしゃるのですね。勅使河原さんの繊細な感性と、命に対する真剣な向き合い方に感心しました。畑の作物たちはどれも生き生きしていて元気そうですね。
勅使河原さん
私は自然環境に負荷を与えない形で、この土地にあるものを生かしながらおこなう農法に興味があります。この土地はとても自然が豊かです。今後は、これまで以上に植物、虫、土の中の微生物などについて学び、植物や生き物がお互いに作用し合いながら、多様性が生まれ循環する、そんな豊かな畑を育み、暮らしをつくっていきたいと考えています。 今は作物をつくるばかりでなく改めて土づくりをするところから始めていて、一部の畑で緑肥を育てています。今育てているソルゴーという植物は、刈り取ったら時間をかけて肥料にしてまた畑に戻す予定です。そうやって土の変化も長い時間をかけて観察していきたいと思っています。
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その他に大切にしていること、習慣にしていることは何かありますか?

勅使河原さん
エディブル・スクールヤードや都内の児童館を中心にガーデンでのティーチャーとして、小学校や児童館に通い子どもたちと時間を共にしています。
北麓草水
エディブル・スクールヤードとは、どのような取り組みなのか教えていただけますか?
勅使河原さん
1995年にアメリカ、カルフォルニア州バークレー市にある公立中学校で始まった取り組みです。オーガニックレストラン「シェ・パニース」のオーナーシェフのアリス・ウォータース氏が当時荒廃していた中学校を、子どもたちが荒れる原因は食にあるという考えのもと、ガーデンとキッチンを軸に必修教科と統合し体験的に学べる授業づくりを始めました。子どもたちと畑を耕し、種を撒いて育てた野菜を収穫し、料理して食べます。その過程で子どもたちは持続可能な生き方や、エコロジーを理解する知性、自然界との情感的なつながりなど、多くのことを学びます。共に育て、共に食べ、地球に生きているという感性を磨いていく、いのちのつながりを伝える教育です。(エディブル・スクールヤードについて、こちらから詳しくご覧いただけます。)日本でも取り組みが始まっていて、私も2箇所の学校で、自然の中で子どもたちの感性を開いていくということをエディブル・スクールヤードで学んでいます。
北麓草水
とても素晴らしい取り組みですね。すべての子どもが学校での学びとして、自分たちで育て、それを食べるという体験ができれば、生きる力や知恵になります。そして幅広い分野のことが繋がって総合的な学びになりますね。
          
勅使河原さん
ガーデンでの子どもたちの様子を見ていると、とても生き生きとして瞳を輝かせ、私が思ってもみなかったことを発見し、感じています。自然の中で体験したことが学びとなって、より深く知りたいという意欲になり深い学びに繋がっていくと思っています。先日も子どもたちとキュウリを収穫したのですが、「キュウリを切った時に、ジワジワ水が溢れ出してきたよ!」とか「縦に切ったらスパッ!と音がして、横に切ったらスコン!と音がしたよ。」など子どもたちの観察力や感性にはいつも驚かされ、こちらが学ぶことが多いです。
北麓草水
勅使河原さんはイラストレーターとしてもご活躍されていて、自然や植物をモチーフにされた作品が多いですね。絵を描くようになったきっかけと、今後どのような活動をされるのか、お話を聞かせていただけますか?
勅使河原さん
イラストやアニメーションは、目に見える世界と見えない世界が大きな循環の輪で繋がっていることを、子どもたちをはじめ多くの人に伝えるために描いていきたいと思っています。絵を描くことは子どもの頃から大好きでした。小さい頃あまり人と話をすることが得意でなかった私を、母が絵画教室に通わせてくれるようになりました。その先生がとても素敵で、絵を描くだけでなく、お庭で花を摘んだり、採れた野菜やハーブを使って料理をつくったり、様々な体験をさせてくれました。そして、大学では岩絵具の美しさに惹かれて、日本画を学ぶようになりました。日本画は自然の素材を使って描く絵画です。子どもの頃の体験が今に繋がっていますね。これからは、この畑を自ら耕すことで感じたこと、自然の神秘やいのちのつながりを絵本にして子どもたちに伝えていきたいです。そしてまだ先のことですが、いずれこの畑を子どもたちと一緒に学びながら過ごせる場所にしていけたらと考えています。土や植物に触れて自然の中で過ごすことで、命、食べ物、地球について考えるきっかけを見つけ、自然の大きな循環の中で自分が生きていることを感じてもらえる場所にできたらと思っています。

畑で写真を撮り終わった後は、すぐ横を流れているきれいな川に案内してくださいました。清らかな水と涼しい風が流れる川辺に座り、今年初めて収穫したというカボチャでつくってくださったケーキと、畑のハーブでいれたハーブティーを頂きながら、お話を伺いました。ここは小さい頃から遊びながら、水、光、植物、虫を見つめ、自然への感性を育んだ大切な場所だと教えてくださいました。勅使河原さんの作品に感じる、自然への洞察力や動植物への愛情は、この環境で育まれたということを実感させていただきました。ご自身が子どもの頃に自然の中で体験したことや、そこで感じた感動、インスピレーションを、今度は子どもたちに伝える活動をされていることが、時代を繋ぎ大きな循環の輪をつくられているのだなと感じました。今後のご活躍がますます楽しみです。ありがとうございました。(2021年8月20日公開)

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