
河口湖のほとりで、焼き菓子のお店「うづらや」を営まれている真弓さん。卵、乳製品、白砂糖を使わない素材の味を大切にしたお菓子は、味わい深く心と体を元気にしてくれるようです。ご主人の秀一さんは、庭師として造園のお仕事をされています。そして植物や自然を作品に生かした現代美術家でもあります。お二人に日々の暮らし、食についてお話を伺いました。
- 真弓さん
- 子供が生まれてからは、生活のリズムがどんどん変わっていくので、ずっと習慣として続けているのは、朝起きてまず白湯を飲むことだけです。
- 北麓草水
- その習慣でよいことはありますか?
- 真弓さん
- 朝のスタートがスムーズに、おだやかにできるようになり調子が良いと感じています。その他に気をつけていることは、食事です。
- 北麓草水
- 具体的にはどのようなことに気をつけていらっしゃるのですか?
- 真弓さん
- できるだけ国産のものを、安心安全に食べられるものを選ぶようにしています。そして毎日豆は必ず食べるようにしています。家には10種類くらいの豆が瓶に入って並んでいます。
- 秀一さん
- くらかけ豆、ぺたんこ豆とか珍しい豆も色々あります。近くの道の駅でも見かけると買いますね。
- 真弓さん
- 豆を毎日食べているのですが、作り置きはしないで、毎日その日にいただく分を煮るようにしています。
- 北麓草水
- 豆料理をいくつか教えていただけますか?
- 真弓さん
- 今の夏の季節なら、みどり色の豆を煮て塩で味付けし、すだちを絞っていただく。さわやかでおいしいですよ。冬には赤白豆を煮てメープルシロップで甘く味付けをする。おなかいっぱい豆をいただきたい時は、豆と野菜のスープにします。塩だけの味付けでも素材の味が出てとてもおいしいです。
- 秀一さん
- 食べることも生活も質素に暮らしていますね。娘も豆が大好きで、豆料理や鉄火味噌と玄米ごはんが家庭の味となるのではないかな。
- 北麓草水
- 鉄火味噌というのはどんなものなのですか?
- 真弓さん
- ごぼう、にんじん、しょうがなど、様々な根菜をみじん切りにして味噌といっしょに炒めたものです。ごはんにのせたり、きゅうりに付けて頂いたりします。
- 北麓草水
- 秀一さんにお伺いします。日々暮らす中で習慣にしていること、大切にしていることはありますか?
- 秀一さん
- 朝起きて着替えるときに5本指の靴下を履くのですが、立ったまま履くようにしています。地下足袋のコハゼも、座らずに片足立ちで留めるようにしています。
- 北麓草水
- なぜそのようにされるようになったのですか?
- 秀一さん
- その日の体の調子を感じることができるのです。片足でバランスを取って体を使うので、「今日は体が整っているな。」「疲れが残っているな。」とか自分の体を観察できるのです。造園屋で働いていたときの親方が、「仕事中に膝をつくな。おしりをついて仕事をするな。」と常々言っていたのです。膝やおしりをついてどっかり座ってしまうと仕事着も汚れますし、動きが鈍くなります。いつでも自分の体に気が行き届くようにしておきたいのです。
- 北麓草水
- 体調を保つためにされていることはありますか?
- 秀一さん
- 朝、体に違和感を感じたら、その日のうちにストレッチをして体をほぐすようにしています。時間があるとプールでひたすら泳ぎます。水中での身体感覚は、地上で感じるものと全く違っておもしろいです。視覚、聴覚、嗅覚も含めて、体の感覚を研ぎ澄ませていたいと思っています。意識していないと感覚はどんどん鈍くなってしまいますから。
- 北麓草水
- 庭師としての仕事は、自分の体をフィルターとして環境を作ることだと話す秀一さんです。自分の中身を空っぽにすることで、自然、空間からのインスピレーションを繊細に受け取り、動くことができる体を常に保つようにしていらっしゃるそうです。
- 真弓さん
- 私は時間があるときは、週2・3回フィットネスジムに行って体を動かしています。一回30分、さっと行って運動してさっと帰ってきます。運動するようになって腰痛もなくなりました。あとは睡眠です。夜10時には眠ります。朝は5時30分から6時には起床します。
- 真弓さん
- 自分がやりたいと思うことをできるように、日々生きています。いろんなことを深く考えず、思い立ったらいつでも動くことができる自分でありたいです。
- 秀一さん
- 自生種(その土地に自生している植物)を大切にしていきたいと思っています。河口湖のあるこの地方に移り住んで、外来種がまだ少なく自生種が豊かにあることに気がつきました。それを知ることによって、元々ここに合った植物は何なのだろうと考えることで、仕事で庭に植物を配するときの判断の一つにしていきたいと思っています。
河口湖を見下ろす高台の古い一軒家が真弓さんの営む「うづらや」です。崩れかけていたその家を、秀一さんが手直しして整えて作った空間です。店の周りに配された木々も、ずっと昔からそこにあるような風情で訪れる人を迎えてくれます。お二人それぞれにご自身の仕事に向き合う真摯な姿と、お二人で共有する質素でありながらとても豊かな生活の一端を教えていただきました。ありがとうございます。